「かやくご飯? 何、それ」

炊き込みご飯を前に、大学に入って知り合った関西出身の友人が、「これは、かやくご飯や」そう言い張ります。

東京で生まれ育った私は、その齢になって初めて「かやくご飯」なる言葉を聞いたものでした。

今から思えば、他愛のない論争はもうしばらく続いて、通りかかった他の友人たちも一様に「炊き込みご飯」と答えたため、

炊き込み派圧勝で食事を終えました。

そして、とどめとばかりに、メニュー表の前に彼を連れて行ったところ、彼は憮然とした顔で、「東京はこう呼ぶんやなあ」。

目次

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かやくご飯と炊き込みご飯の違いは関東と関西?

翌日、気になったので、図書館で調べてみたところ、結局は呼び名が関西とそれ以外とで違うだけで、

かやくご飯と炊き込みご飯はほとんど同じご飯だということが判明しました。

論争は、実は引き分けだったんですね。

でも、同じではあるんですけど、やはり、かやくご飯は関西人好みの薄味で、

炊き込みご飯は関東らしく、濃口醤油で濃いめの味付けになっています。

それから、これは東西に限らず、お米を間違えてはいけません。

ななつぼし、ひとめぼれ、ゆめぴりかといった粘り気のあるお米が適していて、間違ってもコシヒカリを使ってはいけません。

ベタベタした炊き上がりになってしまうし、せっかくのコシヒカリがもったいないですよ。

お米に煮汁と具を入れて炊き上げる。

料理をしない私でも「炊き込み」はイメージできます。

 

しかし、なぜ「かやく」なんでしょう?

これも調べた成果をお教えしますね。

「かやく」とは本来、漢方の用語で、主薬の薬効を増すために、少しの補助薬を入れること、またはその補助薬のことなんだそうです。

そこから意味が転じて、料理で薬味的に使われることから「加薬」となりました。

今ではカップラーメンの内容表示にもありますが、ひらがな表記なので、その本来の意味を知らない人がほとんどです。

それに「火薬」って思ってる人もたくさんいますが、それだと余計に意味がわかりませんよね。

かやくご飯・炊き込みご飯と五目ご飯の違いは? 混ぜご飯とはどう違う?

かやくご飯と炊き込みご飯の件が解決したと思った途端、

「五目ご飯はどう違う?」

「混ぜご飯はどう違う?」

 

そんな疑問が沸き上がり、Uターンして再び図書館へ。

はい、五目ご飯とは炊き込みご飯のことでした。

「な~んだ」ですよね。

結局、かやくご飯と炊き込みご飯、五目ご飯は同じものだったんです。

 

では「五目」とは何でしょう?

五目ご飯の他に、五目ずし、五目いなり、五目焼きそば、五目そば、五目あんかけ等々、いろいろありますね。

5つの品目が入っているから「五目」という説もあります。

しかし、いちいち数えたわけではありませんが、すべてが5種の食材を使っているとも思えないので、

「種々のものが入りまじっていること」

という解釈を支持したいところです。

 

次は、混ぜご飯ですが、これは明快に違います。

炊き込みご飯は具と一緒に炊き上げますが、混ぜご飯は炊き上がった白いご飯に、味をつけた具材を混ぜるんです。

ご飯はふつうに炊くだけなので、失敗するリスクは、水加減に気を使う炊き込みご飯より、はるかに少ないんですね。

それに、今はご飯に混ぜるだけという、味付き具材のレトルト食品が数多く発売されていますから、こちらのほうがお手軽です。

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かやくご飯・炊き込みご飯の英語訳は?

すき焼きが「sukiyaki」で通用しているように、炊き込みご飯も

「takikomi gohan」

で大丈夫と、あちこちの例文集に載っています。

しかし、どうしても英語っぽく使いたいのなら、

「rice seasoned and cooked with various ingredients」

となるでしょうか。

直訳すれば「いろいろな具材を煮た味付けしたご飯」です。

これじゃあ、なんだか美味しそうじゃありませんね。

かやくご飯・炊き込みご飯 季節別おすすめご飯を紹介

春におすすめのかやくご飯・炊き込みご飯は、タケノコご飯!

はなんと言ってもタケノコですね。やわらかい新鮮なタケノコが手に入りやすく、シャキッとした食感を楽しみましょう。

あとは、旬の鯛、山の恵みのフキなんかもいいですね。

夏におすすめのかやくご飯・炊き込みご飯は、夏野菜中心に!

どうもに炊き込みご飯というのはピンときませんね。

やはり暑いから、ごちゃごちゃしたご飯はもうひとつなんでしょうか。

そこで夏野菜を思いっきり使って、夏を乗り切りましょう。

鶏肉、オクラ、ミョウガをふんだんに使った土鍋炊き込みご飯

トマト、ピーマンの炊き込みご飯

梅干し炊き込みご飯は、クエン酸が疲労を回復させます

新鮮トウモロコシのさっぱり炊き込みご飯

秋におすすめのかやくご飯・炊き込みご飯は、マツタケご飯!

は炊き込みご飯にもってこいの季節ですね。あれこれ目移りして、

ひとつを選ぶのはムリなんですけど、やっぱりマツタケご飯です!

でも、なかなか手が出ないお値段なので…。

そこでお財布を考慮して、栗ご飯もあげておきましょう。

問題は、だれがどうやって皮をむくかなんですね。

冬におすすめのかやくご飯・炊き込みご飯は、牡蠣の炊き込みご飯!

牡蠣が旬を迎えます。

そしてその牡蠣を使った炊き込みご飯は絶対おいしいですよね。

牡蠣だけでというぜいたくもいいですけど、マイタケと合わせたご飯もなかなかのものですよ。

とにかく生姜を忘れないでくださいね。

かやくご飯と炊き込みご飯の違いは、「文化」の違い!

かやくご飯と炊き込みご飯の違いは名前だけである、ということなんですが、

それでは、どうして西と東で呼び名が異なるんでしょうか?

同じ材料、同じ作り方、それなのに名前が違います。

遡って調べれば、いろんな仮説は出てくるんでしょうが、明確な回答はありません。

物理的な違いがない以上、考えられるのは、人の心情による違いなんです。

東西の気質の違い、慣習の違い、言葉の違い、風土の違い…

そういったものすべてをひっくるめた「文化の違い」が、かやくご飯と炊き込みご飯の呼び名の違いになるんですね。

東では、今川焼き、マック、肉まん、

西では、回転焼き、マクド、豚まん、

これからも、東西それぞれに違う名前で呼ばれるものが出てくるんでしょう。

だれも困らないし、

「これ、そっちじゃ、何て名前?」

なんだか楽しくないですか?

 

さて、例の友人が、夏休みで関西の実家に帰省するというので、散歩がてら見送りに行きました。

彼が言うには、かやくご飯の最大の長所は、冷めてもおいしいところだそうで、いくつもの駅弁を抱えています。

なるほど、それで駅弁には炊き込みご飯の種類が多いんですね。

というわけで、新幹線は早く着いて、のんびり駅弁を食べるヒマもないし、

駅弁買いすぎてお金がないから、高速バスで帰省することになったとのこと。

どこか、おかしい…。

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